回路組む回。
2本似たようなギターがあった場合、全く同じはつまらないので、ピックアップを用意した。
Greco "DRY" 言わずもがなの有名ピックアップ。後年もののDRYはスタンプもラベルもない。しかも4芯仕様でコイルタップ出来る。これはJJシリーズから外された個体のようだ。確かに当時リヤハムがタップ出来る仕様は定番だった。
余談だが以前スピットファイアの情報収集中に見た記憶があるが、SPF-70に載っていたDRYは、コイルタップ対応という点では同じでも3芯だったはず。
Greco "JX-Ⅱ" これをふたつ。
ラージポールピースでいかにも暴力的な出力を持っていそうな見た目だが、リードアウトは一般的なシングルコイルと変わらなかった気がする。
実はこれの前身にJXってのがあって、そいつは確かハイパワーシングルだった。ダンカン・クオーターパウンドやシェクター・モンスタートーンの存在を考えれば需要もあったろう。
またJXは中間タップ線を持ち、コイルタップ回路にすれば一発で通常のシングルコイル並みの出力に落とすことが出来た。
スピットファイアの最上位機種SPF-70と同じピックアップ構成となる。ただ狙って探していたわけでもなく、「あったので」それもアリかと選んでみた。当時モノのグレコピックアップを載せてやろうかなぁ、ぐらいには考えていたので、方向性としてはいいセンだと思う。
付属のネジをキチンとセットで出品してくれる人だったのでありがたいんだが、元がピックガードレス・ダイレクトマウントなのでこのネジが使えない。このネジはボディ側に刺さって、バネの反力でピックアップを持ち上げるのであって、ピックアップの穴に対してはスカスカだ。
元々着いていたVIRGIN KILLER(書くの恥ずかしい)ピックアップのネジを使うことを考えた。フェンダージャパンでもよく見るドリルねじ仕様なので、これを使えばネジが自らタップを立ててネジ穴を作ってくれる。
なんてことをやっていると、リード線の根本がポロッと。おいおいおいやめてくれ。そうでなくてもこのピックアップは断線等のトラブルが多いモデルで、外してみると使えない個体も多いと訊いている。
まぁ、その場所ならハンダで補修できそうなので安心する。
今更だが実は、昔からSSH(アメリカ市場的に言うならHSS)ってやつがあまり得意ではない。若い頃からそうだった。リアがイイ感じだと思うとフロントのシングルが硬すぎる音でイヤだったり、あるいはその逆だったり。HSHってのはツーハムにセンター足してみましたというものだと考えるとそうおかしくもないが、どちらにしてもシングルコイルとハムバッカーの共存する環境というのは、ポットの抵抗値や(当時はまださほどトーンを弄らなかったが)コンデンサの数値で、どちらかに合わせどちらかに妥協するという問題がどうしても生じる。
そこで今回面白い回路を組んでみる。
500k/250kデュアル・ポテンショメータ。いわゆる1軸2連ポット。よく似たものにバランサーポットや、ベースなんかにあるノブが上下2連になってるコントロール用のポットがあるが、どちらとも違う。
500kΩと250kΩの二種のポットが連動していて、1つのノブでコントロールするというケッタイなものである。ちなみにフェンダーからしか出ていない。
あとはこれだ。4回路5接点の、いわゆるスーパースイッチ。見るからにOAKタイプだ。少し安いコピー品らしきものもあるけど、とりあえずフェンダーって書いてある袋に入ってると気分いいじゃない。すぐ捨てるけどw
これらで何をしようというのか。
これだ。
フロンティスランドさんから配線図を拝借した。
https://frontisland.com/ 「配線図集」というコンテンツに多くの配線図が掲載されていて面白い。
最近気付いたがYouTubeチャンネルもお持ちのようだ。
https://youtube.com/@frontisland 以前はよく、DGBさんという方が運営する"DGB Studio"というサイトを覗いていた。ピックアップ配列ごとに大量の回路図や実体配線図が載せられており、かつて自分で考えた、組んだ回路と同発想のものを見つけて懐かしく思ったり、複雑かつ合理的な回路や奇抜で斬新なアイディアに感心したり勉強になったりした。しかし残念ながら、いつの間にか
閉鎖されてしまったようだ。その節はありがとうございました。
話を戻そう。
これがどういう回路かというと、シングルコイル用の250kΩポットと473コンデンサの組み合わせと、ハムバッカー用の500kΩポットと223コンデンサの回路を並列に内包し、ピックアップに合わせて切り替えてしまおうというもの。ついでに折角の4芯ハムバッカーなので、ハーフトーン時オートコイルタップも組み込んだ回路になっている。
元々が3シングルのストラト弾きなので、わざわざハムバッカー搭載ギターを手に持ったときにコイルタップの必要性は感じない。まぁ元々ついてりゃ気分で触るが。それにこのDRYはリードアウト7.5kΩ前後のようなので、コイルタップして単体で使うにはチト出力が足りないのではないか。
実際の回路図についてはもう、こういうことを頭から煙を出しながら考えていたのは30年以上前なので、なかなか理解が追いつかないが、順を追って見るとスーパースイッチの4つの回路をそれぞれ、概ね各ピックアップの挙動を決定する3セクションと、残りの1つをヴォリューム/トーン回路の選択セクションとして使っている事がわかる。
ハーフトーンの制御が面白い。フロントPU(赤色)セクションにはポジション4にリアのタップドシングルもつながれ、そのままセンターPU(緑色)セクションの
ポジション2/3/4上を渡ってそのまま出力される。センターPUは緑色セクションの
マスター端子につながれ、ポジション2/3/4のときだけ
フロントセクションからの信号にミックスする形で出力される。ポジション2ではフロント、ポジション4ではタップドリアとミックスされ、ポジション3のときはフロントセクションからの入力がないのでセンター単体で出力されるわけだ。
その後回路選択(水色)セクションを通り、ポジション1/2/3/4のときはシングルコイル用回路、ポジション5ではハムバッカー用回路を通って出力されることになる。
さて、早速組んでいくんだが
いろいろと狭ぇ。 通常ストラト、1V2Tの回路では2番目のトーンポットを逆向きにする。キャビティの端に近くなるのでスペースが厳しいからだ。また最初から2つのトーンを1つのコンデンサで兼ねる設計だったので、それが容易になるようにという意図もある。それがスタンダードになり、このギターもデフォルトで2つのポットが向かい合っていた。しかしこれではどうにも狭い。幸いこのギター、キャビティの幅方向は狭めであまり余裕はないが、長さ方向はだいぶ余裕がある。そこでトーンポットを逆に向けておいた。
めんどくせぇぇぇぇぇ!
なにせギター2本分の配線をこの中に押し込んだようなものだ。うっかりポット間アースを忘れたが、組込時のジャック配線時にやればいいだろう。ただ導通確認を行っていない。とりあえず祈っておこう。
少し前に、工具専門店でたまたま見つけて買った、このハンダコテ台が使いやすい。ハンダ作業をしていると、手が1本2本足りないと思うことが多々ある。このコテ台にはパーツを保持するクリップが2つついており、角度も距離も自由に変えられる。例えばあのパーツとこのリード線を持っていてもらって自分はコテとハンダを持つ、なんてことが出来る。
特にキャビティとの干渉等もなく収まったので、今回はおしまい。こうして見ると、のっぺらぼうのカバードピックアップのスマートさも悪くなかった、とは思う。