トラックに転がす用の安ストラトをヤフオク等で探してるうちに、
部屋の片隅に転がっている2本のジャンクストラトを生き返らせたいと本気で思うようになってきた。
以前のブログでも書いたかもしれないが、これらのジャンクギターについて書きたい。
今回画像多いし長い。
ギター弾くより弄るほうが好きかもな人向け記事となっております。
まず、20年以上前に格安で意味もなく購入しながら、
今の今まで放置し続けてきたトーカイ製のストラトモデルの正体が偶然わかってしまった。
これだ。正体は
TOKAI MAT。
本来はグラスファイバーボディ、カーボンファイバーネック。
80年代に一瞬流行ったクラック塗装が施されている。個人的には好きではない。
ヘッドにはCustom Edition表記。
本来MATであれば ”TOKAI MAT” のデザインロゴ、
または単に ”TOKAI SUPER EDITION” 表記の個体もあるようだ。
ナットキャップとロックボルトは欠品、というか
ずいぶん前に当時の友人にくれてしまった。合うかどうかはわからないがと。
もらったギターにナットキャップがない、とかだった。
そのころはこのギターに興味がわかなかったせいもある。
ジョイント部分が薄く削られ、一風変わった接合になっている。
それよりも気になるのは、明らかにウッドネックであるということ。
簡単に調べたところ本来のカーボンファイバーネックはネック裏からヘッド裏表に至るまで
黒色塗装されている。
それにカーボンネックはトラスロッド方式ではなく、ワイヤーで反り調整するようなので
スカンクストライプのあるこのネックはウッドである。
外してみた。
カーボンネックが気に入らなくで購入後にカスタムした可能性も考えたが
スタンピングがあるところを見るとメーカー組み込みなのかもしれない。加工も綺麗だ。
こういうバリエーションがあったのか、
はたまたカスタムオーダーだったのか・・・
この個体は1ハム1ヴォリュームだが、
当然バリエーション対応のためザグリは広い。
かろうじて弁当箱ではないが変わったザグリだ。
確かにこれならSSH、HSHはおろか、3Hだとかジェイク・E・リーのようなスラントマウントSSHだって対応できる。
この個体にはフロイドライセンスとおぼしきロック式ユニットが載っていた。
6点式シンクロのスタッド穴と、2点支持スタッドアンカーの穴がある。
鉄板で連結されたスタッドアンカーを大きいほうの穴に落とし込み、
シンクロ用の穴のうち2か所を利用してボディに固定する。
ねじ止めできるためアンカー自体は圧入ではなくスルッと入る。
このユニットはロッドに欠品があって使えない。またストリングタイテンブロックがない。
あっても弦をブロックによって弦をロックできるようには思えない構造になっている。
まともに弾いた記憶どころか、弦を張った記憶すらないが
恐らくボールエンドを切らないタイプで、後ろのこの辺から通す感じだろう。
面白いのがバックプレート。
ウッドボディと違って強度がある(割れや欠けの心配が少ない)ので、
まるで目覚まし時計の電池のフタのような構造になっている。
ネック側にツメを引っ掛けてブリッジ側でパッチンだ。
これは良いアイディアだと思う。ラクチンだ。
が、俺ウラブタはずしっぱのヒトなんだよねー。
ストラトの特徴的な舟形ジャックプレートをわざわざ塞いで、サイドジャックにしてある。
開けてみると中は空だが、アクティブ回路のモデルもあったようで、その場合ここに9V電池が入る。
どうせならカーボンネックで弾いてみたかった。
巷には稀に出るようだがそれなりの値段で取引されている。
長いけどもう1本いくぞ。
これだ。俺の原点。
GRECO SE。モデルナンバー不明。
俺が人生で初めて触れたストラト。
これがもうw
10代の俺によってひどいジャンクにされている。
SPACEY SOUND表記。
気になるのがBRAZEN PICKER PROFESSIONALという表記。
この時代のグレコに、あるものとないものがある。
単に年代によってなのか、またこの文言で俺が連想するのは木曽スズキ(鈴木バイオリン)なんだけど、
関係があるのかないのか・・・
1980年 フジゲン製。
プレートに旧:富士弦楽器製造株式会社を表す、FUJIGENGAKKIの刻印がある。
グレコのストラトはヤフオクでもまだ結構な数が出る。
状態は様々だが、ジャンクでも2万円くらいの値がついたりする。
よく見るのは70年代後半製で、ラージヘッド、1ピースメイプルネックのモデルでも4点止めである。
ブレットトラスロッド、マイクロティルト付き3点止めってのはあまり見かけない。
一部木部が出ているのはこういうことだ。
当時のヒールがきれいに処理されてハイポジションが弾きやすいギターが羨ましくて、
似たような効果を狙ってノコだのカンナだので乱暴に削った結果だ。
さすが中学生だ。
ネックを外すとちゃんとマイクロティルト・アジャスト機構が搭載されている。
フェンダージャパンが出来たのって82年だっけ?
このころにはコピー品もここまで技術レベルが上がっちゃったってことなんだろうか。
加工精度もいい。
本家のマイクロティルトはそもそも仕込み角調整の手間を省くための改悪だし、
同時にネックが組み込み易いように、ネックポケットの加工を緩くする最悪の変更も行われている。
このグレコは俺の本家US''74よりもネックの接合がしっかりしている。
というか本家がカスである。
中古であったこの個体のフレットが減っていたせいもあるが、
何を思ったか高音弦側スキャロップを試みて途中で飽きた。
ナットも溝が減って深い。開放がビビる。交換しなければ使えない。
今でいうレリック、ちょっと前でいうエイジドみたいなものにそれより前から憧れていたらしく
中途半端に塗装を剝がしたりした跡がそこかしこに見られる。
グレコ刻印の、これなんだっけ?ロトマチックだっけ?
シャーラー・ロックペグ(確か)を付けたときのネジ穴が残る。
ボディはといえば、シンクロのスタッドの穴が広がって、ユニットが前に出ている。
画像はネック側に押し付けた状態。プレートエンドとピックガードの間が均一でないのがわかる。
1弦の部分のスタッドはもう、バカになっていて、手で抜ける。
シンクロタイプの載せ替えは難しい。
埋めなおして開けなおす手間をかけても、強度とその後の精度はどうだろう。
いっそ2点支持等に改めるのが早い。
ハイティーンの頃にはステージでも弾いていた。
任意の音を出したままアームを持って本体を持ち上げ、
上下に揺さぶるようなステージ上でのひどい使い方の結果である。
もはやどんな回路だったかも思い出せないが、
スイッチが二つ、ポットまでプッシュプルのスイッチ付きである。
ON-ONで3つのスイッチが必要だった理由がわからない。
リアにシングルサイズハムを載せていて、コイルタップを含め理論上4PUとして構築していた時期もあるし、
F+R、F+C+Rを選択できた時代もあったし、フェイズを選べた時期もあった。
加工は丁寧で、きちんと3Sザグリである。ボディは木目からするとライトアッシュだろうか。
コントロールキャビティの隅が荒れている。
スイッチポットの高さが入らなくて、俺が工具ないもんだからドリルで突っついた跡だ。
いわゆる弁当箱ザグリってやつは、
あれはあれで共鳴胴代わりの効果を生んで、鳴りが良いように感じる。
セミホロー効果だ。かつてチャンドラーなんかはそれをうたい文句にしていた。
挙句貫通しちゃって穴開ける。
俺はこれを接点復活材注入口と呼んでいるが、ここから吹き込んでも肝心なところには液はかからない。
ネック・ボディどちらも結構致命的なダメージがある。
しかし困ったことにこれを復活させたい。
10年早く考えてれば、パーツも今より出回っていたかもしれない。
しかしそれなら別のコンポーネントを組んでいたかもしれない。
最初のグレコの後にもう一本、ナチュラルフィニッシュのグレコを買った。中古で3000円だった。
スモールヘッド、メイプル1ピース、Cシェイプ、1プライ8点留めの、いわゆる57仕様だろうか。
こちらはSUPER SOUND表記で、良く鳴る個体だった。
その後フェンダージャパンST57、ST72と新品で購入。
57は2TSでアルダー、72はオリンピックホワイトでバスウッドだった。
俺がバスウッドに良いイメージがないのはこの72のせいだ。
バスウッドが嫌いなわけではない。
その後知人からセイモアダンカンのローズ指板の62モデルを買ったりして、
自室にはストラトの格好のギターが6~7本あった。
ところが19歳で74を手に入れるとそれらすべてが一瞬で色褪せて、どうでもよくなってしまった。
しばらくして73を、これまたローンを組んで手に入れると、この2本のUSAこそがホンモノで、
その他の国産は程度の悪いニセモノとしか思えなくなってしまった。
そうなるとあとは早い。それらのギターはいつの間にか散っていってしまう。
今では少し後悔めいた感情を持っている。
この頃から今まで変わらないが、
俺はFenderと名のついたところから出たものしかストラトキャスターという名称で呼ばない。
そこの線引きは重要である。コピーはあくまでコピーである。
しかし当時と違って、確固たる理想をもって作られた品質の高い楽器は、
どこの誰が作ったモノでも評価され称賛されるべきであると考えている。
だからFender以外のストラトモデルも同じように愛す。
信念と情熱をもって作られたギターは例外なく皆美しいし、
何より、すべての楽器は愛されるためにこの世に生まれてくる。
そう、この世の全ての楽器に愛される権利がある。
それがたとえ、理想も情熱も持たぬ作り手によって世に放たれた量産品であってもだ。
楽器の価値を決めることができるのは、ただ一人その楽器の使い手だけだ。
歳かな。長くなっちまった。
TOKAIのほうは、ブリッジを何か用意すれば、少なくとも弦は張れる。
グレコは、じっくり、いろいろ盛り込んで生まれ変わらせようと思う。
どうしても捨てたりできずに、いままで持ってたんだから。