80年代後半、グレコのラインナップに
"GRECO-DEVICE"なるロゴをあしらった
いくつかのモデルが現れた。
まず思い出すのはJJシリーズ。
コンコルドヘッドを持つ、
ジャクソン・ディンキーのコピーモデル、
と考えて良いシリーズだ。
それとほぼ同時期に追加されたのが
鳥類のクチバシのような
スリムで鋭利なヘッドシェイプを持つ
スピットファイアとボンバードという
2モデルだった。
グレコは当時、
ジャクソン製ピックアップの輸入代理店でもあり
実際ジャクソンPU搭載モデルすらあったJJシリーズだが、
そのボディシェイプは
ソロイスト/ディンキーシェイプをコピーしてはいない。
ジャクソンのそれと比べると
左右のホーンの長さは短く、
うまく表現できないが、
ストラトキャスターから周囲の面取り部分を削ぎ落とし
平面部分のみを残したような、
スリムでスクエアなボディを持つ。
そのJJシェイプのボディをピックガード仕様にし、
22フレットのミディアムスケールネックを合わせ、
当時のスーパーストラトカテゴリーに放たれたのが
グレコ・スピットファイアであった。
残念ながら販売期間はそう長くはない。
しかし、当時中学生だったか高校生だったか忘れたが
グレコのカタログを擦り切れるほど眺めた俺の記憶の中に
その印象は鮮烈に刻まれている。
当時、スピットファイアをベースとする
足立祐二モデルが存在したからだ。
もちろん憧れはしたが、
どういうわけか当時から
アーティストモデルやシグネチャーモデル
あるいはいわゆるドンズバ仕様なんてのに
不思議とあまり惹かれなかった。
スピットファイアは独特だった。
SPF-40/55/70という3ラインナップだった。
なんだか日焼け止めの種類みたいな品番だが
この当時の品番はそのまま金額を表している。
まずそれぞれボディ材が異なる。
上位機種からそれぞれセン/アルダー/バスウッドだ。
搭載ピックアップもそれぞれ異なるほか、
ブリッジも3モデルそれぞれ違っていた。
40のみ2スタッドのシンクロタイプトレモロ、
上位2機種はロック式トレモロを採用していたが、
"WING"と"G-FORCE"という、
それぞれ別のものが与えられている。
どのモデルも
指板をメイプル/ローズウッドから選択出来たが、
70だけはオイルフィニッシュネックが採用された。
グレコは俺のファーストギターのブランドであり
親しみがあった。
当時すでにロック式トレモロを敬遠し始めていた俺の
現実的な選択肢としては最下位グレードということになろうが
これまで持っていなかったのだから、
当時の俺は結局買えなかったんだろう。
「これまで持っていなかった」
そうだ。過去形にしてやった。
つまりポチったんだ。
程度は悪くない。ワンオーナーだと思う。
というか程度の良いものをポチるに至った経緯がある。
それについては次回書く。
特徴的なヘッドシェイプとDEVICEロゴデカール。
刻印が打たれたギヤカバーは、
SE等でおなじみの
四角いボディのロトマチックに使われていたものと
おそらく同じものだろう。
ペグ本体はジャパビン後期おなじみのGOTOH SG381系。
上位2機種はトレモロユニットに合わせたのか、
ハードウェアはブラックで統一され、
40だけが唯一クロームシルバーとなる。
…のは別に構わないんだが、
ラインナップにロック式トレモロがあるせいもあり
ストリングリテイナーがテンションバーで済まされている。
グレコに限った話ではなく、当時のトーカイ、
フェルナンデスでもよく見かけた。
ロックナットと共に使われるパーツだが、
これ一つで全ての弦にテンションかけられるから
これでいいんじゃない?なんてノリで
シンクロタイプのトレモロユニット搭載モデルにも
使われてしまったんだろう。
これがよろしくない。
テンションバー自体が大きな抵抗となり、
弦のナット部分での自由な往来を大きく阻害する。
そしてそれがトレモロ使用時の
チューニングの狂いの原因となる。
後にローラー形状、
もしくは実際にローラーが可動するストリングガイドや
ローラーナットが生み出されたのは歴史が示すとおり。
これはどげんかせんといかん。(懐かしい)
オリジナルの2点支持トレモロ。
当時アメリカンスタンダード・ストラトキャスターの
2スタッドシンクロユニットに人気があった影響は大きい。
また上位機種がフロイドローズの規格にあわせて開発した
オリジナルトレモロを採用しているので、
弦間10.5mmに揃える必要があったんだろう。
これの正体はなんてことはない、
GOTOH/ジョン・サーでおなじみGE1088、
あれを改良して10.5mm版を作ったというわけだ。
実際プレート裏面に1055の刻印がある。
そのためアンカースタッドではなく
初期のフロイドローズ同様木ネジスタッドだ。
ただアームだけはシンクロタイプに似合わず
6mm径の太いものが使われる。
ロック式トレモロの上位機種と
見た目のイメージを揃えたかったんだろうか。
ちなみにこのアームは現在でも供給があり新品が買える。
例えば現在では入手が難しくなってしまったような
6mm径直ネジの古いFRT等に流用できる場合がある。
ネック裏のスタンプはSPF-40、
シムに半分隠れた文字はメイプル指板を表すMだろう。
かつてフェンダージャパンST57で体験した
ネックセットボルトをすべて抜いても、
ネックを揺さぶらないと外れてこないほどの
キツキツの加工精度が素晴らしい。
ただ、フジゲンは昔からそうなんだけど、
ネックボルト穴のボディ側にもネジ山がある。
いやま、わかる。
下穴一緒に空けてそのままビュンなんだろう。
フジゲンは量産メーカーなんだから。
'80SEも、その後所有した'78SEも、
当時のフェンダージャパンST57、ST72も、
そしてこれも、2011Cool-Zも一貫してだ。
恐らく現実的な問題は起きてこないだろうが、
これが昔から気になる。
ネックをボディ側に引き寄せ密着させる作用を
ボディ側のネジ山がいくらか邪魔をする方向に
はたらいてしまうじゃないか。
少なくともデタッチャブルネックの本家フェンダーは
そういうやり方をしていない。
取引時の商品説明によると、
前オーナーいわく回路は特にいじっていないが、
ヴォリュームポットだけは250kに換えたそうだ。
その方が音が良かった、ということだった。
弾いた感じ確かに、
これ以上ハイがでしゃばっていたとすると
ちょっと煩いな、という気はする。
搭載ピックアップはシングル、ハム共に
"VIRGIN KILLER"、ヴァージン・キラーとかいう
厨二病丸出しのネーミングのシロモノが付く。
フェライトマグネット、パッシブだがフルカバードで、
中身はエポキシのようなもので密閉されている。
センターは時期的にまだ逆磁逆相ではない。
サウンドはまぁ、バランスもよく、嫌いではない。
さて、問題のテンションバーは取り外したい。
そのうえでヘッドテンション(ナットテンション)を
どう確保しようかと悩む。
グレコ刻印入りのペグを外すのは惜しいんだけど
マグナムロックの軸高調整式を入れてみる。
しかし極限まで下げられる構造にもかかわらず、1/2弦だけはどうしても角度が足りない。
片6連配列でアングルを持たないヘッドの1/2弦は
テンション対策としてこの手のペグを使ったとしても、
何らかのテンショナー/リテイナーが必要だと悟る。
こんな形でのヘッドでも、その位置関係はストラトに準ずる。
通常ストラトであれば、
1/2弦リテイナーは4/5弦ペグの中間あたりだが
ヘッド形状ゆえ1/2弦はもろにデカールの真上を通っている。
デカールを無視してビスを打つことにどうしても抵抗がある。
ふと思いついて、パシフィカとフラートンを見てみる。
ロゴ避けりゃいいか。そういう手もあるな。
見た目的には
お世辞にも格好良いとは言えないが、
こんな感じを落とし所にした。
アメスタタイプも考えたが
当時の日本製、金物はすべてGOTOHということで
GOTOH製を選んでみた。
かなりナットに近づいてしまったので
3/4弦用の高さのある方のゲタを使ったが
それでもかなり強めに角度がついてしまった。
肝心のテンションはまあ、こんなもんだろうという感じ。
50'sストラトはストリングガイドがヘッド面ベタ付けなので
それを考えりゃそうおかしな状態ではない。
小僧の頃に喉から手が出るほど欲しかった、
カタログの中にあったアレが手元にあるのは
なんだか不思議な感じだ。
苦手なはずのミディアムスケール、Rの大きな指板でも
ジャクソンと違って、このギターは不思議とよく手に取る。
実は、これに至るにちょっとした回り道をしている。
次の記事にでも書こうと思う。
1. 無題
置いてあるギターで一番弾きやすかったからかな。