たまにはなんか書こうか。
かつて、グレコのストラトで四苦八苦していた頃に試した、印象深いPUについて書こう。
ひとつめはいわゆるシングルサイズ・ハム、
ストラトのピックガードに基本無加工で搭載できる、小さなハムバッカーPUがある。
今日ではメーカー/モデルも増え、選択肢が増えたようだ。
当時の数少ないラインナップの中から、ESP製のパワーレイルを選択した。
本当はダンカンのホットレイルが欲しかったが高くて買えなかったので、
見た目の似ているこれにした。
シングルコイルを縦に二分割したスペースにそれぞれ一つずつ、
二つの独立したコイルが並ぶ構造で、
持ってはいないがビル・ローレンスなんかもおそらく同じ構造だろう。
弦の振幅の関係で最も出力が出にくく、
そして使用頻度が高いリアのみ単体で載せた。
グレコのオリジナルPUがとにかく非力で、
しかしピックガードに四角い穴が開いたSSHレイアウトはどうにも好きじゃなかった。
グレコのストラトがラージヘッドモデルだったので
(スーパーサウンドシリーズではない。恐らく安価なモデル)
本家に倣って出力の抑えられたPUだったのかもしれない。
本家のストラトキャスターは、70年代頃になると、製造効率の関係で
コイルのターン(巻き数)が減らされ、いくぶん低出力でトレブリーな音になる。
俺の’74/’73がそれだ。
サウンドはシングルコイルよりミッドが太くパワフル、
PAF系のヴィンテージタイプ・ハムバッカーよりも若干小さい出力でトレブリー。
攻撃的だがハイパワータイプのハムバッカーとは違うキャラクター。
生意気に4芯だったのでスイッチを増設してコイルタップ回路にした。
何せシングルコイルの半分だから物理的に出力が足りなすぎるので、
コイルタップした単体では使い物にならないが
コレとセンターのハーフトーンは独特で、
カッティングなんかで面白い効果を産んだ。
シングルコイルともハムバッカーとも違う独特なサウンドは魅力的で、
独立したジャンルとして考えてもいいと思うくらいだ。
現在所有しているジャクソン・ディンキーのフロントに、
まさにコレらしきものが載っている。
カタログモデルとは違うようなので、恐らく換装されたものだろう。
ダンカンなのかESPなのか確かめていないが、
何だか懐かしく感じてしまった。
ふたつめは、ディマジオ・HS-3
え?
あれシングルじゃないの?
シングルコイルではない。
シングルコイルを上下二分割して縦に重ね、
ハムバッキング接続された積層ハムバッカーだ。
当のイングヴェイはその後HS-4
(旧ディマジオYJM)を経てダンカンに落ち着いた様だが、
当時はイングヴェイモデルといえばコレだった。
ポールピースは上半分のコイルにしか貫通しておらず、
下のコイルは出力に貢献しない。
純粋にハムキャンセルコイルとして機能する。
上半分しか使えないのでは実際の出力は
これまたシングルコイルよりも小さくなってしまうので、
ボビンがピックガードの穴ギリギリまで大きくされ、
コイルワイヤーが目一杯巻かれている。
PUカバーを着けてピックガードに取り付けると、
ピックガードと擦れながら押し込まれる感じだ。
それでもまだ、純然たるシングルコイルよりも出力はわずかに下回る。
サウンドはシングルコイルとは違う。
クリーントーンで比べるとずいぶん印象が異なる。
ハムキャンセルで消えるのはノイズだけではなく、
特定の周波数も抱え込んで消す。
物理的にシングルコイルとは音質の組成が異なる。
しかしコイルワイヤーの選択や巻き数が絶妙で、
周波数特性などもシングルコイルに近く、
とても気持ちの良いトーンにチューニングされている。
ピッキングのタッチが秀逸で、
アラが出やすくウデが試される繊細な一面はあるが、
ニュアンスで言えば、
ある意味シングルコイル以上にシングルコイル的であるとも言える。
繊細で表情豊かな表現力を持ちノイズも少なく、
シングルコイル的なトーンを求めてもそれに応え、
またそれ以上の魅力も合わせ持つ。
例えばイングヴェイモデルのような、全部これで揃えたギターは、
イングヴェイモデルを持つ以外の意味をも持ち合わせる。
シングルコイルに拘っているのかと考えると、実はそうでもないかもしれない。
いつまでたってもピッキングスキルは大して上達しないが、
ただハムバッカーをメインにすると、余計ピッキングを疎かにするかも、
なんて変な心配はしてしまう。
それよりも、ハムバッカーの音作りに関して全くもって素人なことに、
たまにガックリするw
これらの特異なハムバッカーは、
シングルコイルの魅力も、
ハムバッカーの魅力も教えてくれた。
しかし俺がギターの魅力を引き出せる様なギタリストになれるかは、
残念ながらまた別の話なのだろう。