2週間くらいはもっただろうか。
ジェリコに与えた牛骨の話である。
もはや驚きもしない。
北の地のまだ見ぬ友が、2本目のストラトを手に入れたようだ。
いいぞいいぞw
ストラトと双璧をなす名器といえば、数あるなかでもレスポールを連想する人は少なくないだろう。
今回はその2本のギターに思いを馳せてみる。
レスポールを作り上げた、今はなきレスター・ウィリアム・ポルフス、
その名もレスポールさんは自身もギタリストであった。
ギブソンのソリッドボディ・エレクトリックギターには奇抜なボディシェイプのものが目立つが、機構的には極めてギターらしい進化の道を歩んできたと感じられる。
自身の経験や思想が、欲求・原動力となったであろうことは想像に難くない。
ぶっといスタッドに引っ掛け、弦自体のテンションでヘッド方向に押し付け、固定するストップ・テイルピース。
そしてオクターブピッチの調整を可能にするために、各弦独立したサドルを持つブリッジ、チューン・O・マチックブリッジを別に作り、既にあったストップ・テイルピースと「組み合わせて」使うという発想、さらにはブリッジの載るスタッドボルトを全ネジにして、弦高調整まで可能にしてしまう。
そしてこれまた弦のテンションでボディ側に押し付けられており、調整の度にどこかネジを外す・緩めるといった手間が必要ない。
2PUに対してフロント・リアそれぞれ独立したヴォリュームとトーンを備える。
弦の振幅はナット/ブリッジから離れ、弦の中央に近づくほど大きい。つまりPUの出力も理論上大きい。
2つのヴォリュームは、この出力差を補整する狙いがあったのではないか。
その上どちらか一方、使わない方のPUのヴォリュームをゼロにすれば、PUセレクターはオンオフスイッチに早変わりする。
メイプルとマホガニーを張り合わせた手の込んだボディはアーチド・トップとされ、バインディングも施される。
金属パーツ、樹脂パーツの配色もよく考えられており、美しさにも拘ったギターであると見た目からも判る。
かつて読んだ、レスポール氏のインタビューが印象に残っている。
インタビュアーが握手のために右手を差し出すと、レスポール氏は左手の甲を向けて差し出したという。
氏はかつて交通事故によって、右腕を失うかというほどの怪我を負っている。幸い右腕を切断するには至らなかったが、肘を固定する必要が生じた。
無難に、真っ直ぐ伸ばした状態で固定しようかと訊ねた医師に、氏は
「私はギタリストだから、ギターを弾く角度で固定してくれ。」
と答えたそうだ。
氏は人生の最期の瞬間までギタリストであった。
対するストラトはと言えば、
俺の愛する永遠の名器の産みの親、レオ・フェンダーは、ギタリストでもミュージシャンでもなんでもない、ただのラジオ屋だった。
エレクトリックギターが生まれてまだそうは経っていない頃なので、多くのミュージシャンがやれアンプを改造してくれだの、スピーカーキャビネットを作ってくれだのと訪れたそうだ。
そんなミュージシャン達の意見に育てられた、「ただの優れた技術屋」レオの作るギターは、極めて合理的で、独創性に富んだ斬新なものだった。
まずシンクロナイズド・トレモロユニットが凄い。
テイルピース/ブリッジ/ヴィブラート(トレモロ)ユニットを、たったあれだけのスペースに納めてしまっている。
サドルの載るブリッジプレートからボディを貫通して裏面まで伸びるブロックは、「イナーシャ(慣性)ブロック」と呼ばれる。
固定ブリッジと違い、動くブリッジは弦振動を相殺する方向に動く。これを抑制してサスティンを得る、ウエイト/バラストの意味を持たせるために敢えて質量を大きくとってある。そして弦のテンションに相対するスプリング・フックも兼ねる。
ブロードキャスター/テレキャスターに採用した高音弦側のカッタウェイに加え、低音弦側にもカッタウェイが施された、ツノが2本生えたようなボディは、ボディバックの腹・胸に当たる部分が大胆にえぐられ、またボディトップの右肘の当たる辺りは斜めに削ぎ落とされている。
ギターという楽器のイメージを叩き壊すような奇抜なボディは、当時の人たちの目にどんな風に映っただろう。
3つのPUを持つストラトは、マスターヴォリュームに加えフロント/ミドルPUにそれぞれ独立したトーンを備える。それらにPUセレクタースイッチを含む回路すべてが、ボディシェイプに沿った大きなピックガードに取り付けられ、ピックガードを外せば、アウトプットジャック以外の全ての回路にアクセス出来る。
当時はフロントPUをリズム、リアをリードPUなんて呼んでいた。
リアPUにトーン調整が備わっていないのは、元々トレブリーでハリのある音が欲しいときに選ぶPUだから、マスターヴォリュームとしたのは、ピッキングする右手に近い位置にノブを配置して演奏中でも容易に触れるようにした結果ではないか。
しかしねぇレオさん。
カッティング中に何度ヴォリューム・ノブを本気で殴って悶絶したことか。
それにトルクの軽いポットだと、弾いてるうちにヴォリューム動いちゃうんですよ。
怒濤の速弾きしながら出音がフェイドアウトしていくカッコ悪さったらないよ?
まぁいい。
世に数多あるツノが2本のカタチも、多くのロック式トレモロも、結局はストラトの改良型と言える。
フェンダーがCBSに買収されたのち、ミュージックマンやG&Lを立ち上げた氏も、今はもうこの世にない。
確固たる思想と熱い情熱をもって創られた楽器は皆美しい。
この世の全ての情熱的なギター・ビルダーに心から感謝申し上げます。
そして
俺は人生のなかで、しかも早い段階、多感な青春の真っ只中で
ストラトキャスターに出逢うことができて本当にラッキーで
幸せだと思う。
1. 無題
何故自分はもっと早くストラトの魅力に気付けなかったのだろうか・・・気付けなかった年数分なんか勿体無いなとストラトを手にする度に思いますよ。