6時3分、俺とかみさんの2つの携帯からエリアメールが鳴り響く。
同時に、俺がこの世で最も聞きたくない音が響き渡る。
俺んちみたいな田舎には、広域連絡用のスピーカーが設置されてる。
どこどこのお年寄りが行方不明です、服装は、なんて放送するやつだ。
比較的涼しい夜はエアコンを切って、窓を開けてねる。
その開いた窓から、不気味なサイレンが鳴り響いて一瞬で目を覚ました。
国民保護サイレン。
知らない人はググるといい。
そのサイレンの意味するところを知っていた俺は凍りついた。
まさか現実に聞く日が来るとは思っていなかった。
夜勤で帰りの遅いかみさんは隣で寝息をたてている。
外でジェリコがサイレンに反応して遠吠えしている。
テレビをつければ良かったんだけど、俺は自分の意思でテレビを観る習慣がない。
ついてりゃ観るけど。
テレビをつけたのは、通過を知らせる2度目の警報の後だ。
北海道から長野の広域で警報が発されたこともその時知った。
一時はこの長野に着弾するのかとまで考えた。
間抜けもいいところだ。
おかげで十数分、生きた心地がしなかった。
これは俺の癖なんだけど、
何かあると、まずいちばん望まない最悪の状況から考えてしまう。
爆発と熱と衝撃波に耐え、その後49時間外気を遮断出来るような場所、
しかも守るべきものを連れて、ここから数分で到着できるところ、
そんなところは思い当たらない。頭が真っ白になってしまった。
今回はっきりしたことはひとつだけ。
狙う意味のないこの長野に着弾することはまずないと思いたいが、
もし、仮に、そんなことが起こった場合、
そしてそれを、今回のようにJアラートで知ったとしても、
俺は誰も守れない。
自分さえもだ。
1. 無題
麻呂さんの仰る通り着弾点が自分の地域だったと想定した場合、アラームが鳴ってから行動してもなんの意味も無い事を痛感しました。
それほどまでにミサイルのスピードは想像を超えたものでした。